<参考文献>
これは今回使用する教材である。
この投稿では、上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店の内容を読んでまとめつつ、学童期の体力・運動能力の低下について考える。
身長・体重の増加-相関関係-
背景
この100年で身長が増加した。その理由として、
種々の要因が関与しているが、第二次世界大戦や朝鮮戦争及びその後の文化・社会的要因の影響を無視できないであろう。
上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.138〜p.139
と、上田礼子は述べている。
しかし、近年は生活習慣病が問題となっている。
その理由についても、上田礼子は次のように述べている。
これらの背景には都市化により子供たちの生活環境の変化–食糧事情の好転、テレビ・ビデオの普及、屋外での安全な遊びや遊ぶ機会の減少など−が関与しているであろう。
上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.138〜p.139
つまり、近代の体力・運動能力の低下、ひいては生活習慣病について
- 食糧の欧米化
- 都市化による屋外での安全な運動機会の減少
- 文明発展による情報機器の娯楽化による運動時間の減少
などといったこと示唆されるようだ。
身長・体重の推移
(引用:上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.138)
また、1981年と2011年の体重を比較したとき、体重の増加が見られる。
しかし、これは身長の増加に伴って骨量や筋肉量、臓器量も増加しているためだと考えられる。
よって、1981年から2011年にかけて子どもの肥満が増えたわけではない、ということに注意したい。
これは2018年(平成30年)文部科学省の学校保健統計から述べられていることだが、
近年は、むしろ痩身児が増加傾向である。
幼児期に肥満児であることの影響
乳児期の体重とその後の肥満との間の関係は低いが、しかし幼児期に始まる肥満は学童期にも継続するという。
上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.138
食習慣と運動習慣は生活習慣に括られる。
これらの生活習慣が乱れている場合には、糖尿病や高血圧、心臓病の発症リスクが高まることは一般的に知られている。
よって、子ども時代から肥満にならないような食習慣と運動習慣を身につけさせることは、それらの疾患の予防に役立つ。
肥満の原因の大半は、過食と運動不足であるため、それらのバランスをとることが大切だ。
摂食したカロリーが自分に必要なカロリーを上回る場合には、その分を運動によってカロリー消費する。
あるいは、その分の食事量を減らしたりすることが必要であると言える。
学童期の運動機能の発達
学童期の運動能力の発達について、上田礼子が述べたことをまとめる。
- 粗大運動の発達に関係する体力の増大
- 粗大運動に男女差が見られること
- 微細運動の発達で器用さ、正確さ、速さなどが著しい
- 調整力系機能、平衡機能、筋力(エネルギー)の順に発達していく
調整力と筋力
時期的には調整力系の体力がより早く発達するが、
上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.140
学童期には調整力と筋力(エネルギー)の発達の混在があり、
加齢に伴って筋力発達の占める割合が増加しながら思春期に入る。
調整力を主体とする平均台歩き、横ころがりなどは
3歳から6、7歳ごろまでに急激に伸びて、
その後は緩やかになることが知られている。
(引用:上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.140)
体力の中でもエネルギー系を主体とする筋力、持久力、スピード、パワーなどを要するものは加齢とともに直線的に発達するが、
9歳以降により発達するとみられる。
(引用:上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.140)
平衡機能
平衡機能の発達は、
小学校低学年、中学年において急速に発達し、
上田礼子『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(2012)三輪書店 p.140
高学年になると緩慢になることが知られるであろう。
微細運動機能の測定
- マッチ棒並べ
- 垂直線書き
といったテストで調べられる、と『生涯人間発達学 海底第2番増補版』(上田礼子,2012,三輪書店)に記載がある。
微細運動機能の推移から上田礼子が読解したこと
- 小学校低学年から学年が上がるにつれて、規則的に微細運動の速さや正確さの発達が見られること
- 高学年の終わりごろから12歳ごろまでに、腕・肩・ひじの筋肉調節が急速に発達し、ほとんど大人のレベルに達すること
- それ以降は練習次第で発達すること
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