体外受精の発展は女性のキャリア形成に役立つかも

倫理的感受性
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キャリアと家族を天秤にかけなくて済むようになる

吉村泰典によれば、「現代の生殖医学の発展は遺伝学の進歩に負うところが大きい」(※1)という。

その遺伝学の進歩の原動力のひとつには、不妊の女性に対する社会的な偏見や差別の存在があったからではないか、と私は推察する。

だから、近年ではART出生児数が年々増加してきているのであろう。

また、現在、育児支援の制度が不十分であるにもかかわらず女性の社会進出が著しいため、高齢出産となることはやむを得ないと言える。

それに加え、現在は核家族化やグローバル化などによるライフスタイルの多様化がすすんでいる。

体外受精を利用できることにより、自分のキャリア形成と家族形成を天秤にかけなくて済むため、女性の選択肢の一つとして今後さらに有力となりうるのではないだろうか。

このことから、体外受精の発展により、現代の女性たちはより一層自分らしい人生を歩めるようになると考えられる。

今後は体外受精のさらなる発展に期待したい。

調査方法

 このテーマを調べるにあたり、わたしは本講義の教科書と検索エンジンを使用した。

検索エンジンはGoogle Chromeであり、

検索ワードは「これからの生殖医療」「生殖補助医療 増加理由」「生殖補助医療 メリット」「生殖補助医療 種類」「代理出産と生殖補助医療 違い」「生殖医療の進歩」である。

体外受精の現状

  • 体外受精は不妊の最終手段
  • 体外受精による出生児数が増加している
  • 体外受精による出生児の過半数は凍結胚

体外受精から派生したものが顕微授精と凍結胚であるため、ここでは、この2種も体外受精に含めて述べていく。

現状では、体外受精は不妊の「究極の治療法」(※4)である。卵管因子による不妊において「腹腔鏡下手術やマイクロサージャリーが有効でないとき」に選択されるためだ。

また、生殖補助医療による出生児数が年々増加していることも現状のひとつである。

具体的に言うと、ART出生児は2004年では約61人に1人、2008年では約50人に1人、2012年では約27人に1人、2016年には約18人に1人、と徐々に増加している。

さらに、2008年よりART出生児の過半数は凍結胚による出生児が占めるようになってきている(※日本産科婦人科学会によるART出生児数と厚生労働省の人口動態統計による総出生児数を参照)。

では、体外受精にはどのような利点と課題があるのか。

利点

体外受精の利点は、ほぼ確実な受精

はじめに、利点について述べる。

まず、日本生殖医学会によれば、体外受精の大きな特徴には「精子と卵子を確実に受精させることができること」があり、「精子と卵子に力があれば、体外受精をすればほとんどの場合・出産が可能」であるという。

また、「これに対して他の全ての不妊治療では、妊娠しない場合にそれが体内で受精が起こっていないからなのか、それとも精子や卵子の力が落ちているからなのかがわか」らないため、出産のチャンスを減らさないように「他の不妊治療を早めに切り上げて体外受精に進むこと」があるとも述べている(※7)。

3つの課題がある

  1. 既往歴の問題や治療と仕事との両立が困難である
  2. 染色体異常児が出生する可能性がある
  3. 100%妊娠するわけではない

次に、課題について述べる。

課題は3つある。

第1に、体外受精を含めた生殖補助医療による不妊治療の問題点には「通院回数,入院の有無,社会保険適応か否かといったことから,薬剤の副作用など」(※4)があるという課題である。

第2に、「不妊治療によって染色体異常児が生まれたとしても、医療過誤などのケースとは違い、直接的な関連性を実証するのは難しい」という課題がある。

そのため、何かが起きた場合の責任は「最終的には不妊治療を選択した当事者である夫婦や、それによって生まれた子どもに」のしかかってくるという(※6)。

第3に、高額にもかかわらず妊娠・出産の確証がないという課題がある。

例えば、銀座医療法人社団楠原ウィメンズクリニックでは、月経時に合わせた検査であれば、保険適用で合計およそ1万7620円であるのに対し、体外受精に必要な費用は30万円前後である。

とはいえ、現在では国から一部助成金が出ているため、経済的な負担は多少軽減されている。

また、地域によっては自治体から助成金が支援されるところもある。

わたしの考察

まとめると、わたしは、会社の協力、社会環境の改革、チームで染色体異常児とその家族を支援することが必要だと考察した。

上記のとおり、体外受精には主に3つの課題があるが、まずは第1の課題に対する考察を述べる。

不妊治療では妊婦の既往歴や仕事との兼ね合いが問題となる。

不妊治療が長期にわたるものであり、仕事との両立が困難だからだ。

それに伴う精神的な負担もある。

このような時間的・精神的な負担の軽減には会社の協力が不可欠だと私は考える。

会社から理解を得て、柔軟に働けるように支援してもらうほかないのではないだろうか。

しかし、それは一個人の訴えであるため、対応してもらえない可能性もある。

だから、国を通じて会社に待遇を改善してもらう方法が良い。

今後の根本的な政治改革を求めたい。

次に第2の課題に対する考察をする。

不妊治療による染色体異常児の出生は、医療が不確実なものであるため、仕方がないことである。

だから、出生後の医療機関や地域、家族などがチームを形成し、染色体異常児その家族に対する支援を講じることが大切となるのではないだろうか。

近年、地域包括ケアシステムが重要視され、そのために様々な制度や団体が立ち上げられているが、そのシステムは染色体異常児に対する支援においても大きな役割を果たしてくるように思われる。

次に第3の課題に対する考察をする。

不妊治療は大変高額なため、国から一部助成金が出る。

国が不妊治療に助成金を出す理由には、日本の少子化に歯止めをかけたいという思惑が潜んでいるのだと私は考えている。

私は、国が不妊治療に助成金を出してくれることに対しての感謝の気持ちはある。

今後も継続してほしいとも願っている。

しかし、不妊治療は必ずしも成功するものではなかったはずだ。

国には、加齢による不妊治療への助成金支援に加え、女性が働きやすい社会環境を形成していくことを期待したい。

最後に、体外受精の利点に触れながら、それを発展させるべき理由について述べる。

私が体外受精の発展を求める理由として、代理母の存在が必要ないことがある。

代理懐胎は複数人が不妊治療に関係するため、他の生殖補助医療である体外受精と人工授精に比べ、多数の「倫理的・法律的・社会的・医学的」(※3)な問題が生じる。

また、そのことによって多数の関係者のそれぞれの立場が複雑化する。

そもそも代理懐胎の実施は日本で禁止されているが、その理由として日本産科婦人科学会は次のような見解を持っている。

「生まれてくる子の福祉を最優先するべきである」「代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う」「家族関係を複雑」「代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められていない」(※3)ことである。

つまり4つの懸念があるわけだ。

もし体外受精を実施すれば、これらから3つの懸念が除外され、親の懸念は「生まれてくる子の福祉を最優先するべきである」のみとなる。

したがって、長い月日をかけ、新しく法律を定めて日本における代理懐胎を認めるよりも、「倫理的・法律的・社会的・医学的」(※3)リスクも少なく、そのための法律の制定のための手間も減る体外受精を発展させたほうが多方面で様々な利点が生じる。

これが、私が考える体外受精を発展させるべき理由である。

このように、体外受精には利点ばかりではなく、いまだに課題が山積みである。

国が女性を取り囲む社会環境を変えることができなければ、高齢出産になることはやむを得ない。

そのため、発展した体外受精の高い技術を用いることができれば、加齢による不妊が生じたとしても妊娠・出産の可能性が高まる

あとは、不妊治療を受診する方々の精神的・社会的な支援を行う医療職の手腕が問われるであろう。

体外受精のさらなる発展に期待していきたいと思う。

引用文献

※1:日本IVF学会, Retrieved from: https://www.jsar.or.jp/dissertation/2019/%E7%94%9F%E6%AE%96%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E2%80%95%E7%94%9F%E6%AE%96%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%AE%E9%80%B2%E6%AD%A9%E3%81%AE%E4%B8%AD%E3%81%A7/(検索日:2020年7月5日)

※2:内閣府,Retrieved from:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_10.html#:~:text=%E7%94%9F%E6%AE%96%E8%A3%9C%E5%8A%A9%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E3%81%AF,AID%EF%BC%89%E3%81%AB%E5%8C%BA%E5%88%A5%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82(検索日:2020年7月5日)

※3:日本産科婦人科学会,Retrieved from:http://www.jsog.or.jp/modules/statement/index.php?content_id=34
(検索日:2020年7月5日)

※4:森恵美(2020),系統看護学講座 専門分野Ⅱ 母性看護学2(第13版),医学書院,東京都

※5:公益社団法人商事法務研究会,Retrieved from: https://www.shojihomu.or.jp/documents/10448/7388932/1128sankou-siryou2-5.pdf/2ad6b7d9-f131-416c-a8d0-e78868f9fd48(検索日:2020年7月5日)

※6:東洋経済,Retrieved from: https://toyokeizai.net/articles/-/187886?page=2(検索日:2020年7月5日)

※7:日本生殖医学会,Retrieved from: http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa12.html#:~:text=%E4%BD%93%E5%A4%96%E5%8F%97%E7%B2%BE%EF%BC%88%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%84%E3%81%AF%E6%AC%A1%E9%A0%85%E3%81%AE,%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E3%81%8C%E6%88%90%E7%AB%8B%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82(検索日:2020年7月5日)

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